導きの光

Act.4 トラウマ


 朝。リノアは何となくすうすうする感覚で目が覚めた。
 隣には、当然というか何と言うか……。
「……またいないし」
 唇を尖らせるリノア。そりゃあ自分は割と残念な寝起きだが、時計を見たところ今日は遅くない。むしろ余裕たっぷりだ。
 リノアはのそりと身体を起こすと、頭を掻いて大欠伸をひとつ零した。
(シャワーでも浴びるかな……)
 その時。
「……?」
 ブランケットの下で、何かが動いた気がする。
 アンジェロな訳はない。彼女はリノアの本来の部屋にいる。
 では、一体何? リノアは、そろりとブランケットをめくり上げた。
「……………………え?」
 そこにあった……もとい、「いた」のは、小さな子供、だった。
 淡い茶髪に、白い肌。目は閉じていて色はわからないが、目鼻立ちは整っていて愛らしい。身体の大きさからすると、3、4歳くらいだろうか。
「……ん……」
 子供は小さく身揺ぎすると、ぱちりと目を開いた。そうすると、ますます可愛らしい。リノアは女の子かと思ったが、起き上がった丸裸――まず最初に疑問に思うべきだったが、この子は何も着ていなかった――の全身を観察すると、間違いなく男の子だと判明した。
 男の子は不安げにリノアを見、部屋を見回した。
「ここ、どこ……? お姉ちゃん、だれ?」
 リノアの頭は、これ以上ないほど混乱していた。この子は、誰?!
 順を追って考えてみよう。昨日、昼休みからこの部屋に帰って来て、それからずっと篭っていた。これは、中央システムのドアロック管理ログを探ってもらえば簡単に証明できる。スコールもリノアも、あれ以降解錠していないのだ。
 それではいつ部屋のロックを確認したのかと言えば、ささやかな晩餐の後の、寝る間際。スコールが風呂を使っている間に、リノアが戸締まりを確認した。つまり、この部屋は朝まで密室。
 そして、スコールがいない。そのくせ、SeeD服はリノアが軽く手入れしハンガーにかけた状態のまま、仲良く2着ぶら下がっている。
 リノアはこくりと固唾を飲み込んだ。
「えぇと……ごめんね、ちょっと確認させて。きみは、スコール……で良いのかな?」
 男の子は、小さく頷いた。

「……一体、何がどうなったんでしょうねぇ」
 学園長シド・クレイマーは、途方にくれた顔でソファを見た。そこには最愛の妻と可愛い「子供達」――ゼル、キスティス、セルフィ、アーヴァイン、そしてリノアと、その隣の小さい「スコール」。
「間違いなく、スコールはいないのですね? キスティス」
「はい。念の為、館内放送もかけましたが、姿は全く」
 キスティスが請け合うと、シドは腕を組んだ。
「昨晩の時点では、間違いなくスコールはいましたね? と、なると……リノアの言う通り、この子は『あの』スコールだということですかね。はぁ……」
 シドはわかっていることを再度確認し、溜息をついた。
 SeeDスコール・レオンハート不在。この一言で説明出来てしまうような、単純な出来事。だが、この「事実」が与える影響はとてつもなく大きい。
 第一は、対外的なもの。スコールは1番人気のSeeDで、「魔女の騎士」だ。常に衆目に曝されている彼は、ある意味行動の自由――いうなれば、プライベート――がない。魔女の騎士は「人間にわかりやすい脅威」として、現在地をつまびらかにすることを余儀なくされていた。
 第二は、内部的なもの。先の大戦で非常なカリスマを発揮し、そのまま司令官という立場に収まった彼を、子供達はやたらに頼っている節があった。それを彼はよくわかっていて、持ち前の面倒見の良さであらゆる物事を処理している。
 シドは長い沈黙の後、深呼吸をひとつして皆に向き直った。
「一先ず、エスタへ連絡を取って、昨日付けの依頼状の手配をお願いしておきましょう。ですので、今朝未明より、SeeDスコール・レオンハートはエスタの派遣任務に就いています……記録上は」
 これで、対外的にも内部的にも一応、説明が付けられる。シドとキスティスの間で設定の擦り合わせが始まった。
 リノアがちらとスコールを見た。彼はぶかぶかの年少組用体操着を着て俯いている。リノアがそっとその小さな肩を抱き寄せると、幼子はびくりと身を震わせた。
(無理ないよね……『知らない人』だらけだもん、怖いよね)
 労るように肩を撫でてやると、戸惑いがちの蒼眸が黒玉の煌めきを見上げた。リノアは微笑む。幼子もつられて笑みを浮かべかけた。が、果たしてそれは形にならず、彼はまた俯いてしまった。
 イデアがソファを回り込み、幼子の傍らに膝を突いた。
「久しぶりね、スコール。私を覚えているかしら?」
「…………」
 スコールは何も言わず、見馴れないもののようにイデアを見回した。
「スコール?」
 リノアが名を呼んでも、スコールは固まったまま反応してくれない。
 暫しのお見合いの後、イデアは「あぁ!」と楽しげに笑った。
「ふふ、スコール。私は確かに黒い服を沢山持っているけれど、黒い服ばかり着ている訳ではありませんよ。赤い服も青い服も、今日みたいに明るい色の服も着るわ」
 おどけるように言ってイデアが示した衣服は、淡い水色のエプロンワンピース。リノアやセルフィでも着られそうな可愛らしい格好だが、イデアにはやけに似合う。ガーデンの一部では、40代という年齢に対して若い彼女に、敬意を表して「魔女」と呼んでいるくらいだ。
「……ちょっと老けたからねぇ、わからなくても無理ないかしら」
「…………まま先生」
 頬に手を当て首を傾げたイデアへ、スコールは漸く口を開いた。
 イデアは笑みを深めてスコールの頭を撫でる。
「嬉しいわ、スコール。さぁ、いらっしゃい。キッチンでおやつを出してあげましょうね」
 スコールの脇に手を差し入れ、抱き上げようとするイデア。だが、スコールは嫌がるようにリノアの腕に取り付いた。
「おや」「あら」
 クレイマー夫婦は目をみはる。
「……あれだけ懐いていたのに」
 シドが不思議そうに言う目前で、スコールは何故かリノアの脇腹に顔を押し付けて隠れてしまった。
「あれ、どうしたの。お姉ちゃんの方が良い?」
 リノアが冗談で言った言葉に、スコールは無言で頷く。
 イデアはリノアや夫と顔を見合わせ、困った様子で溜息をついた。
「小さくても男の子ねぇ。やっぱり、こんなおばさんより可愛いお姉さんの方が良いのね」
 一同は思わず吹き出した。

 学園長室に程近いキッチンで、こぽこぽと湯の沸く音がし始めた。紅茶を入れるために、ポットが火にかけられているのだ。その隣では小さな鍋に満たされたミルクが、くつくつと小さな囁きを零している。
 イデアは、黄金色に輝く蜂蜜をミルクへと注いだ。
「『石の家』で、よく作ったの。冬は特にね」
「そうなんですか」
 リノアはイデアの手元をじっと見ている。彼女が何を見たいのか悟ったイデアは、鍋の中身をマグカップへ注ぎ分けながら、ミルクと蜂蜜の割合をリノアへ教えた。
「これはあくまでも私のレシピでの基本だから、加減は好みで決めたら良いわ。例えば今日なら……そうね、アーヴァインはそのままで、ゼルとセルフィには少し甘めに、キスティスは逆にミルクを足してミントを入れましょう」
 手際良く整えていくイデアの手付きは、流石に慣れた「母親」の動きだった。リノアは感心しながら、カップの中身を混ぜる手伝いをする。
「スコールのは、そのままで良いんですか?」
「スコールには……」
 イデアは、キッチンの隅に置かれていた小瓶を手に取ってリノアへ渡した。
 瓶の蓋を開け、リノアは驚く。
「シナモン!」
「えぇ。それを、はい、ひと振り、ふた振り」
 リノアが瓶を振ると、真っ白なミルクに、茶色い雪が降る。
「そっか、これだったんだ」
「何がですか?」
「昨日、スコールにシナモンを入れたチーズケーキを食べさせたんです。そしたら、『懐かしい感じがした』、って」
 イデアは軽く頷いた。
「人の味覚というものは、幼い頃の食生活で好き嫌いが決まるそうですよ。……さ、紅茶の準備も出来ましたし、持って行きましょう」
 2人が手分けしてマグカップやポットを学園長室へ運び込んだとき、電話をしている学園長を除いた4名は幼子の扱いに苦慮していた。
「あ、リノア〜」
 死中に活あり、セルフィがホッとした笑顔でリノアを手招く。
「どうしたの、セルフィ?」
「あたし達じゃご不満みたい。早く行ったげて?」
 お盆ごとマグカップを横取り、セルフィはリノアを腰で押した。リノアは軽くつんのめり、不可解そうにしながらもソファに座るスコールの元へ向かう。
「お待たせ、スコール」
 リノアは覗き込むように身を屈めて呼びかけた。幼子は俯いたままだ。
 予想はついていたのだろう、リノアは幼子の脇に両手を差し入れると、ひょいと持ち上げた。そして今まで彼が座っていた場所に収まると、スコールをくるりと回して膝に座らせた。
「……あ、固まっちゃった〜」
 何が起こったのか把握できていないのか、それとも短に予想外の出来事だったのか。スコールは両手を中途半端に挙げたまま、動かなくなってしまった。
 鳩が豆鉄砲を喰らったよう、とはこのことか、とゼルは思う。
 アーヴァインがぷっと吹き出し、スコールの頭をてんてんと叩いた。
「スコール、あんまりおっきく開けてたら、お目目落っこちちゃうぞ」
 その言葉を真に受けたスコールは、きゃっと悲鳴を上げて両目を覆う。あまりの可愛らしさに一同は笑ってしまった。
「はいはい、皆お茶にしましょう。カップを配ってくれるかしら?」
 イデアが笑いながら頼むと、キスティスは率先してカップを手にした。
「あら、ホットミルクですか?」
「夏にどうかとも思ったけれど、つい。スコールに作るついでに、皆の分も作ったのよ。良ければ」
「いただきます」
 キスティスは嬉しそうに微笑み、懐かしい味を皆の手に回す。かつてのように、スプーンというわかりやすい目印のものはゼルとセルフィへ、逆に何もないものはアーヴァインへ、ミントの葉が入っているものは自分に、そして。
「スコール、蜂蜜ミルクやで〜」
「ちょうだい」
 セルフィは、両手を伸ばすスコールにカップを渡す様子を見せない。
「どないしよかな〜、さっきスコール、あたしらにイケズしたもんな〜。あたし飲んでしまおかな〜」
「だめー、ぼくのー!」
 セルフィがカップを口に寄せる振りを見せると、幼子は両手を伸ばしてせっせとせがむ。
 セルフィはにっこりしてカップを差し出した。
「冗談、冗談。ほらスコール、あっついから気ぃつけるんやで」
 スコールがしっかり握ったのを確認し、セルフィは手を離す。
「えぇなぁ、スコールのだけ贔屓やん。大事に飲みや」
 スコールはこくりと頷くと、息を吹き掛けてカップの縁をくわえる。が、ふと自分を抱いているリノアを見上げた。
「お姉ちゃんの分は?」
「ん? お姉ちゃんはお茶をもらうから良いのよ」
 スコールは少し考えて、カップをそっと掲げた。
「あげる」
「ふふ、ありがとう! じゃあ、一口いただきます」
 リノアはとびきりの笑顔でカップを受け取ると、少しだけ口を付けて返した。スコールはほっとしたように微笑い、ミルクを飲む。
 それを眺めていたキスティスが、懐かしげに笑い声を零した。
「そういえば昔、スコールのそれを見てサイファーが怒り出したことがあったわね」
 アーヴァインがぽんと天筒を打つ。
「あぁ! あったあった」
「確かあの時、サイファーのやつスコールのを分捕ったんだよな」
 ゼルがそう言うと、イデアもくすくす笑い出した。
「サイファーはスコールのミルクにココアが落としてあるんだと思ったみたいでしたね」
「違うんですか〜?」
 セルフィがくりんと首を傾げると、イデアはリノアを見た。
「これ、シナモンなんだって」
「あら、そうなの?」
 リノアがキスティスへ頷くと、イデアが種明かし、という風に手をひらめかせた。
「シナモンには、身体を温める効果があるのよ。ほら、スコールは身体が小さかったでしょう? あまり薬を使いたくなかったんですよ。だから、せめて風邪を引きにくいように、とね」
 流石、「石の家」に薬部屋を作っておくほどハーブや薬草に詳しいだけある。まぁ実際は、彼は毎年のように風邪を引いていたりするのだが、そこはご愛嬌というものだ。
「……はい。はい、わかりました。それでは、よろしくお願いします」
 学園長が電話を置いた音に、皆が注目する。
「どうでした、あなた?」
「先日ガーデンに技術提供された『ガーディアンリング』に不具合が見つかったとのことで、急遽ガーデンの代表者であるスコールが喚ばれた、ということになりました。取り急ぎ、依頼状をファクシミリで送ってくれるそうです」
 ガーディアンリングとは、SeeDが重用しているジャンクションシステムの質を向上させるアイテムである。エスタの奇才オダイン博士が、自らの発明品オダインバングルをバージョンアップしようとして偶然出来上がった物で、少し前にスコール達6人が実験台と相成った。
「それでですね、同じくこちらに提供されているリングの管理システムのバグチェックの為、数名がエスタから派遣されるそうです。これはまぁ、スコールの身内であるエルオーネか、補佐官殿がこちらに来る口実でしょうね」
「オダインのことだから、『スコールを研究させるでおじゃる!』……なーんて乗り込んで来ちゃったりして〜!」
 声色を使っておどけるセルフィ。皆の間にぱっと笑いが走る。
 オダインの性格を良く知る一同がひとしきり笑った後、シドはいつもの優しい笑顔で皆を皆を見回した。
「では、皆。すみませんが、スコールをよろしく頼みますよ」

 司令室に連れてこられたスコールは、皆の注目の的だった。
 そりゃあそうだろう。まるでお人形のように可愛らしい造作なのだから、どうにかして気を引きたくもなる。
 だがスコールは、何くれと傍で世話を焼いてくれるリノア、なし崩し的に仲良く(?)なったゼルやセルフィ以外には心を開くつもりがないようだった。
「うーん、お菓子でも駄目か……」
「シュウったら」
 真剣にスコールの気を引こうと思案している友人に、キスティスは苦笑する。子供好きのシュウは、スコールを懐かせたいからとあれこれ手を尽くしていた。結論は、まあ、見ての通りな訳だが。
 最初は、イデアに預けてはどうかという話もあった。だがこれはスコールが無言で拒否したので、あっという間に立ち消えとなったのだ。
「スコールはリノアにべったりやねぇ」
 かつての彼の様子を思い出し、セルフィは苦笑いだ。
(……そういえば、あたしらがお互い別々の人間なんやって理解しはじめたの、スコールがあぁなってからやったな)
 セルフィは、朧げに思い出していた。
 それまでずっと、皆実の兄弟のように始終べったりしていた。サイファーなど、ひとつ下のスコールを可愛がる良い「兄貴」だった。
 それがある日唐突に、スコールがエルオーネから離れなくなった。
 最初に顕著な反応を示したのは、サイファーだった。懐かなくなった「弟」に喧嘩を売るようになり、キスティスとエルオーネが調停に入る。その毎日の繰り返しで、スコールとサイファーの仲は益々離れていった。更に下の「泣き虫」ゼルはスコールの代わりたりえず、セルフィとアーヴァインはサイファーの機嫌の良いときだけ遊ぶようになり……。 やがて、皆の仲は崩れたのだ。
 スコールが笑っていた時期のことは、あまりに幼過ぎてもう思い出せない。それくらい、遠い日の話。

 午後から、雨になった。
 司令官スコールが居ない以上手が空いてしまうリノアは、これから半日を小さなスコールの為に費やすつもりでいた。
 司令室とドアひとつ隔てたミーティングルームで、幼子はじっと外を見ている。まるで、誰かが来るのを待っているような――。
「何見てるの?」
「お外……」
 リノアが問うと、彼はぽつりとそれだけ答えた。
 スコールはそれきり、何も話さない。
 リノアも、何も言わない。話せないのだ。
 何を見てるの?
 何を見たいの?
 雨に何があるの?
 雨の日に何があったの?
 誰かを――待っているの?
 問いかけたい。だが、出来ない。いつもの彼にも言えないのに、こんな小さな背中には尚更だった。
 小さい子。
 エルオーネと一緒だった、小さい男の子。
 リノアは言い知れぬ暗い感情を覚え――そんな自分を恥じた。
(馬鹿じゃない、リノア。エルオーネさんはスコールのお姉さんよ? 一緒にいるのは当たり前じゃないの!)
 嫉妬。それが、この暗い感情の正体だ。
 幼いスコールが、自分を見ていない。ただそれだけ、なのに。
「お姉ちゃん?」
 不意に、スコールが振り返った。
「ん?」
「お姉ちゃん、雨好き?」
「んー、嫌いじゃないかな。スコールは?」
「ぼく、雨きらい……」
「そっかぁ」
 リノアは、彼が後ろ向きに乗っている椅子にそっと手を添えた。
 スコールはちらと彼女を見、また窓の外を見る。
「何で、って聞かないの?」
「スコールはお話したい?」
 小さく頭を振るスコール。
「じゃあ、お話しなくて良いんだよ」
「でもみんな、『何で』って聞くよ?」
「皆、スコールが何を思ってるのか知りたいんだよ。だから、お話してって言うの」
「…………」
「スコール、わたしだって知りたいよ? でもわたしはね、あなたが話したいと、聞いて欲しいと思ってから教えて欲しいと思ってるの。わかる?」
 スコールは、リノアを見た。現在の彼のそれより蒼く透き通る瞳に、リノアの姿がはっきり映る。
 リノアは微笑んだ。
 スコールはふいっとまた窓の向こうへ目を向ける。だが、今度は様子が違っていた。
 見ているのは外ではない。俯き加減の瞳が形として捉えているのは、恐らく「現在」ですらない。
「……お姉ちゃんが、いなくなっちゃったんだ」
「そうなの」
「それから、ゼルがいなくなったの」
「うん」
「キスティとセルフィも」
「うん」
「アーヴィンも、サイファーも……まま先生も」
「……うん」
「みんな、いっちゃった。だからぼくは、ひとりで生きていかないといけないの」
 リノアはスコールの横顔をそっと盗み見た。泣いてはいない。瞳は渇いている。
 ――きっと、泣けないんだ。
 抱き締めたいと、リノアは思った。
 だが。
「!!」
 両手で彼を囲おうとした途端、スコールは拒絶を示した。リノアに体当たりをかますと、その勢いのまま椅子から転げ下りて駆けていく。
 司令室からSeeD達の慌てた声が聞こえ、リノアは呆然とする間もなく立ち上がった。
「スコール!」
「ご、ごめん、止められなかった」
 入口付近でシュウは酷く申し訳なさそうにリノアを見、中途半端に曲げていた腰を元に戻した。
 リノアは慌てて司令室を出ようとする。その肩を、キスティスが掴んだ。
「待って、リノア。大丈夫よ、カードもないし何処にも……」
「『何処にも行けない』? 行く場所も帰る場所もないから何処にも行かないだけじゃない!」
「……そうね、だから待って? ほんの少しだけ推理をしましょう」
 キスティスは冷静に逸るリノアをいなすと、教鞭を取るときのように指を振ってみせる。
「まず、前提。あの子は5歳だと申告したわ。つまり?」
「…………年少クラス?」
「正解」
 リノアは怪訝な顔をした。
「それがどうしたの」
「それが大有りなのよ。良いこと? 年少クラスということは、行動範囲が極端に限られる、ということなのよ」
 年少クラスに、校庭を挟んだ別棟で行う授業はない。
 また、教室は2階に集中しているため、3階には行かない。
 更には、年少クラスは後の一般クラスと候補生クラスが混ざり合った構成なので護身術以上の訓練はない。故に訓練系統の施設は基本的に立入禁止だ。
 キスティスはそう説明する。
「ったって、まだ広いじゃねぇか」
 ゼルが不満げに鼻を鳴らし、頭の後ろで手を組んだ。
「いやいや、まだまだ絞れるよ〜。例えば、寮ではない、とかね」
「ほぇ?」
 アーヴァインが指を立てると、セルフィはきょとんと首を傾げる。
「部屋の場所がわからないはずなんだ。朝起きて混乱してるときはリノアが学園長室まで連れて来たし、年少クラス用の大部屋見たって自分の場所はないことくらいすぐわかるだろ」
「あ、なるほど」
 納得したセルフィとリノアが頷くと、アーヴァインはにっこり微笑んでみせた。
「と、いう訳で、手分けしようか〜。ゼルは食堂と校庭、キスティは保健室と図書室ね。駐車場は見なくて良いな……リノアとセルフィ、僕は2階を見るよ。シュウ先輩達は留守番頼めます〜?」
「「了解!」」
 割り当てが決まり、リノアは我先にと駆け出そうとする。が、今度はアーヴァインが彼女を止めた。そして、耳打ちする。
「2階のデッキ、見てきてくれる?」

 雨は、段々と強さを増していた。
 季節は折しも低気圧が好発する頃。ティンバー沖の海上でゆっくりと力を溜めた低気圧は、強い風と雨を伴ってバラムを盛大に脅かしていく。バラムガーデンが背にしているグアルグ山脈は、この大風――「台風」が北に抜ける道筋を阻むため、被害は尚更だった。
 スコールは、ぼうと空を見上げていた。
 暗い空。雨は容赦なく小さな身体を叩く。
 まるで自分だ、と彼は思った。
 何者をも拒絶する、冷たく容赦ない「脅威」。それは、仲間を得る前の自分と全く一緒だ。
 ――いや、今でもそうなのか。
 皆に対してどうして良いのかわからない。リノアに対してどうして良いのかわからない。いくら情を注がれても、理解できないそれに対応出来ず、「緊張」や「苛立ち」、果ては「反発」に変換されてしまう。
 昨日など、遂にリノア相手に爆発してしまった。完全な八つ当たりなのはよくわかっていた。それなのに止まれなかった。
 これではいけないと、わかってはいるのだ。失望され見捨てられたくなければ、これは慎重に隠さなければいけない。それほどまでに皆を好きなのだということを隠さなければならない。そうでなければ、自分はまた独りにされてしまう――それだけは避けなければ。
 雨は、止まない。

 果たして、アーヴァインの予言通り、デッキに彼はいた。
 やや強い風が吹き始めている。まさか飛ばされやしないかとリノアは冷や冷やしていた。小さなスコールは、自分が抱いて連れ歩けるくらい軽いのだ。
「スコール!」
 声を張り上げると、幼子はのろりと頭を下げて振り返った。ずぶ濡れの柔らかい髪が額や頬に張り付いて、頼りなさをより強調している。
「スコール、おいで。風邪引いちゃう」
 スコールは、小さく頭を振った。
 リノアは腕を額に当てて視界を確保すると、小走りにスコールへと駆け寄った。スコールは逃げない。
「行こう」
 だが手を取ると、彼はその手を慎重に引き抜いた。
「……もうちょっと、ここにいる」
「スコール」
「やだ」
 リノアは途方に暮れる。がちゃ、と扉が開く音が聞こえたが、かかずらってなどいられない。
 少し考え、リノアは上着に手をかけた。夏仕様のSeeD服だが、雨避けにはなるだろう。袖を抜き、スコールに覆いかぶさるようにかざして膝を折る。
「……やめてよ」
 震えるスコールの声。
「やめて……やめてくれ、中途半端に情なんてかけるな!」
 甲高い叫びが響き、リノアの顔に新しい雫がかかった。リノアは驚きこそしたものの、何も言わない。
「好きだとかずっと一緒にいるとか、よくそんなこと言えるよな。軽々しい口約束にこっちがどれだけ期待するのか知りもしないで……本当にそうしてくれるのかよ、母親みたいに俺を抱き締めて、可愛がって、最期まで一緒にいてくれるのか?」
 リノアはよろりと、後退るように立ち上がった。スコールは歯を食いしばり、憎々しげに睨む。
「それともあんたが『母親』になってくれる訳? なれる訳ないよなぁ、だってあんたは他人だもの! 血の繋がらない他人だもの、結局は俺なんか置いていくんだろ?! なら放っておいてくれよ、そうしたらあんた達の望む『俺』なんていくらでも演じてやるよ。独りにされるよりマシだもんな。誰かを愛するなんて一生無理だけどまだマシだ、誰かを好きになった途端奪われて絶望するより! なぁ、何で放っておいてくれないんだ? なぁ?」
 幼子に似つかわしくない冷笑を見せる彼の頬に伝うのは何だろう。雨か? 涙か?
「キスティスも、ゼルも、セルフィもアーヴァインも、ママ先生もエルもあいつも皆、皆、皆……! 結局最後に独りにするなら最初から優しい言葉なんてかけるなよぉーっ!!」
 スコールは自分の言葉から逃げるように耳を塞ぎ、その場にうずくまってしまう。
 リノアは、暫く動けなかった。視界が歪みきっていて、動いたら眩暈がしそうだったからだ。
 こんな感情をぶつけられるなんて思ってもみなかった。「スコール」の言葉が胸に刺さって、どうして良いのかわからない。
 2人を見ていたアーヴァインは、セルフィの肩を抱いて踵を返した。
「アーヴィン?」
 セルフィは戸惑い、足を止めようとする。だがアーヴァインは構わず、セルフィを引きずるように歩いていく。
「2人は暫く置いておこう」
「え、でも」
 アーヴァインはセルフィへ頭を振ってみせる。
「スコールも、リノアも、時間が必要だろう?」
「だけど」
「ここがヤツらの正念場だよ」
 滅多にない、切り捨てるようなアーヴァインの冷静な声に、セルフィは口を噤んだ。
「世の中の清んだ甘いところを沢山もらってきたリノアが、濁った苦い部分ばかり飲まされてきたスコールを果たして耐えられるのかな? もし耐えられないんならあの2人はここで終わってしまった方が良いだろうよ。2人とも探せば腐る程『次』がある。……最も、スコールは精神的に『次』があるのかは怪しいところだけどね」
「そんな……アーヴィン!」
「一生、てのはそういうことだろ?」
「そう、かもしれへんけど……」
 セルフィは唇を噛む。アーヴァインは肩を竦めて頭を振った。
 2人はそれから、暫し無言で廊下を進んだ。エレベーターの上昇ボタンを押して、セルフィはちらっとアーヴァインを見上げる。
「……ね、スコール探しに出る寸前、リノアに何か言ってたよね?」
「ん? あぁ、うん」
「何言ったの?」
「別に……ただ、『2階のデッキ見てきて』、って。最近、デッキにヤツの姿を見ることが多かったからさ。そこから飛ぶ気は無いようだったからほっといたけど」
「飛ぶ気って……」
 セルフィは身を震わせた。軽い言い方ではあるが、想像するだにぞっとしない。
「あのデッキって、外に出られるようで出られないんだよね。1階じゃないからさ……。行く場所も帰る場所もないヤツにとっては、ひょっとしたらガーデンの象徴、みたいな感じだったりして、とか僕は思ってたりする。……行くよ、セフィ」
 アーヴァインに肩を押され、セルフィはとぼとぼとエレベーターに乗り込んだ。
「あたし達には、もう何も出来ることないのかな……」
「……とりあえず、3階仮眠室のシャワーブースに、たらいでも持ってこようか」
「は?!」
 セルフィは信じられないものを見るような顔でアーヴァインを振り向いた。一体何をふざけた発言をしてるのだ、この男は?
 アーヴァインは大儀そうに肩を聳やかす。
「リノアもスコールも濡れネズミだろ〜? シャワー使わせてあげないと」
「それならまずタオルやろ!」
 何かがズレた恋人の発言に、思わず裏拳でツッコミを入れたセルフィだった。

「……言いたいこと、全部言った?」
 リノアは厳しい顔でスコールを見下ろしていた。
 スコールは動かない。
 リノアは上着をスコールの頭から被せると、否応なく抱き上げた。
「……っ!」
「こら、暴れないの」
 逃げる間もなく、しっかりと胸に納められるスコール。がちがちに強張った小さな背を、リノアはあやすようにそっと叩く。
「戻るよ。風邪引いちゃう」
「な、んで」
「……ねぇ、大切な人を大事にするのがそんなに不思議?」
 スコールは不器用に頷いた。
「だって、大事にしたら『また』どこかに行っちゃうでしょ?」
 リノアはその言葉に首を傾げた。「また」と言い添える意味が全くわからない。
 確かに、スコールの「兄弟」達は皆、新しい家族の許へ行ってしまった。だが、今はその全員が彼と共にいる。エルオーネですら、会おうと思えばいつでも会える状態だ。
「……スコール、大切な人達がいなくなっちゃうって怖がってばかりじゃ、前と一緒だよ?」
 幼子はばっと顔を上げた。
「じゃあ、好きになった人が皆いなくなってしまうなら、ぼくはどうしたらよかったの?!」
「…………」
 勢いに呑まれ、リノアは絶句する。スコールは、泣きそうな顔を見せて俯いた。
「ぼくが好きになった人は、皆どこかに行っちゃった。
 ……知ってるよ? ゼル達は皆、新しいパパとママのところに行ったって。でもね、ならどうしてぼくには誰も来なかったの? パパとお姉ちゃんがいたから? じゃあパパはどうしてぽくを迎えに来てくれなかったの? お姉ちゃんとママ先生は、どうして僕を置いていったの……?」
 幼子は背中を丸める。
「だから、もう良いよ。我慢するから。諦めるから。もう誰も好きになんてならないから、もう誰もぼくから取り上げたりなんてしないで……」
 そう言って、スコールはぐったりと目を閉じた。リノアはこの隙に、と屋内へ走り込み、エレベーターへ急ぐ。
(……熱が出てる)
 雨で冷やされなくなって漸く、小さな身体が熱を持っていることに気が付いた。さて、どうしよう? 司令室に1度戻るべきか、保健室に直行すべきか。
 とにかく、エレベーターは来た。
「きゃ……リノア?」
「キスティ!」
 飛び込もうとした箱には先客の姿。キスティスはぶつかりかけたリノアの肩を押さえ、状態を確認した。
「まぁ、ずぶ濡れじゃない! でも良かったわ、見つかったのね」
「うん。でもスコール、熱が……」
「これ上に上がるのよね……リノア、仮眠室のシャワー使って。夏の昼だし、湯冷めもないと思うから、2人共渇いたものに着替えた後に保健室に行きましょ」
 言うが早いかキスティスは2人をエレベーターへと引き込んだ。

 ドクター・カドワキの診断は、単に身体が冷えたという外的ストレスからの発熱だろう、とのことだった。子供は病気と関係なく熱を出しやすい。特に問題はないが、身体が小さすぎて解熱薬を出せないから、あまりにも辛そうな様子になったらまたおいで、という。
 今スコールは、空調をごく弱くセッティングした自室で休んでいる。その部屋を、リノアは片付けていた。朝飛び出して、結局そのままにしていたからだ。といっても、乱れているのは寝室くらいで、後は洗濯や整頓程度のことだ。
 思えば、何と様々な物が置いてあることか。
「……普通本の下にお酒とか置く……?」
 何が置いてあるのかと開いた本棚の下の収納は、ブランデーやウイスキーのミニボトルが、半ばコレクション化して置かれていた。その中に、薬瓶が雑じっているのはまたどういう訳だか。
(頭痛薬、買い足しておかないと。もう、消費量ハンパないんだか、ら……、?)
 銘柄を確認しようとして薬瓶に触れた時、リノアは更に奥に空の瓶らしきものがあることに気付いた。
「…………?」
 小さな、掌サイズの小瓶だ。少し色の褪せたラベルには、苺のイラストが描かれている。その隣には、オレンジのイラストが。更には林檎、葡萄……果ては板チョコのイラストなんてものもあった。見覚えが、ある。
「……あ、『アリーテ』のだ」
 ガルバティアの有名な食品ブランドだ。道理で見覚えがあるはずだ、「アリーテ」のコンフィチュールはリノアだってよく食べている。
(カドワキ先生がスコールに言ってた『ジャム』って、これのことかな)
 綺麗に洗われ、大事に閉じ込められた小瓶達。スコールにとって、何を表す象徴なのだろう?
 リノアは、ぱたりと扉を閉めた。ここを開けてしまったことは、スコールには内緒にしておかないと。これはきっと、触れてほしくない部分だ。
 こんこん、とノックが聞こえた。
「はーい。……あら、アーヴァイン」
「やぁ」
 青いラフな綿シャツとベージュのパンツに着替えたアーヴァインが、ちゃっと手刀を切った。
「どうだい? スコールの具合は」
 廊下から中を覗き込む彼に、リノアは肩を竦めてみせる。
「それが、さっぱり熱が下がらないの。もうちょっと具合が良くなったら、ランドリールームに行くのに連れていけるんだけど」
「ヤツのだけなら僕が持っていってやれるんだけどねぇ……」
 アーヴァインは苦笑いし……ふと、ぽんと手を叩いた。
「そうだ、僕がスコール見てようか。1人で置いとくのが心配なんだろ?」
「お願い出来る?」
 両手の先をちょんと合わせて首を傾げるリノア。この姿にスコールは弱いんだろうな……とアーヴァインは思わずにはいられなかった。

 スコールは、ふと目を覚ました。
 暑い。呼吸が辛い。視界がぼやけていて、ここがどこなのか認識出来ない。
(天井、部屋……あぁ、SeeD寮か)
 よくよく見れば、慣れ親しんだ――親しまざるを得なかった――自分の部屋だ。 誰かが、額に冷たいものを置いてくれた。
 目を向けると、「誰か」は大柄な人物だとわかる。スコールの湿った髪を優しく撫で付けるその人は、髪が、長くて――!
「パパ?!」
「わっ」
 突如跳ね起きたスコールに、アーヴァインは本気で驚いた。
「あぁ、驚いた。起きてたの」
「ご、ごめん、なさい……」
 落胆と共に謝るスコール。アーヴァインはゆるりと頭を振ると、幼子の肩をやんわりと押した。
「もうちょっと、寝ていようか。まだしんどいでしょ」
 だが、寝かしつけようとするとスコールは微かに抵抗する。アーヴァインはすぐにに手を離し、枕の位置を調整して小さな身体をそこにもたせかけた。
「喉渇いてるだろ。お水持ってくるよ」
 アーヴァインは幼子の頭を撫で、タオルケットの具合を直してから寝室を出た。
 SeeD寮の作りは、どの部屋もほぼ同じだ。アーヴァインは自室と同じ場所に置かれた小さな冷蔵庫を開け、中を覗く。
 中身は殆ど入っていない。辛うじて果物がいくつか転がっている程度だ。後は、ドリンクのボトルが数本。
「……不真面目な食生活だなぁ」
 まぁ食堂に行けば充分な食事が出来る寮生、しかも男子では、無理もないか。苦笑しながら、スポーツドリンクとミネラルウォーターを取り出した。
「カップ、カップ……お?」
 この部屋で1番小さいだろうデミタスカップを見つけ出したアーヴァインは、同列に蜂蜜の瓶を発見した。気を善くした彼は倍に薄めたスポーツドリンクをカップへ注ぐと、そこにティースプーンでほんの少し蜂蜜を混ぜてやる。
「お待たせ〜、スコール。ほら」
 幼子は小さな両手でカップをしっかり持つと、そっと縁を噛んだ。
「……甘い」
「蜂蜜を入れたんだよ。美味しいかい?」
 スコールは小さく頷いた。
「ありがとう、お兄ちゃん」
「お安い御用さ」
 アーヴァインはにっこり笑うと、デスクチェアにゆったりと腰掛ける。
「……ねぇ、スコール? さっきキミ、僕に『パパ』って言ったけど……そんなに似てるのかい? キミのパパに」
 ゆっくりと優しい声で問うアーヴァインに、スコールは気まずそうに首を傾げてみせた。
「はは、わからないか。じゃあ……そうだな、僕みたいに大きな人なのかい?」
 今度は、頷いてみせる。
「髪も、長かったりする?」
 頷く。
「そっかぁ〜……結構な特徴だね。スコールが会いたいパパは、捜せばきっとすぐ、見つかるね」
 アーヴァインは笑顔を期待して、スコールへと笑いかけた。 だが、スコールは無反応。
(……ありゃ)
 どうも話題の選択ミスらしい。スコールはスポーツドリンクを飲み干し、小さく頭を振った。
「……見つからないよ。だって多分、パパはぼくになんて興味ないから」
「…………どういう意味だい?」
 アーヴァインは探るように、慎重な声で問いかける。
「パパは、ぼくを見ても何も言わなかった。話をしようって言ってたけど、しなかった。……ぼくは要らないんだよ、きっと」
 スコールは、平素の彼のような静かな手つきでカップをサイドボードに置くと、ごそごそとブランケットに潜り込んだ。
 アーヴァインは暫し彼の言葉を吟味していたが……はっとあることに気付き、自身のシャツを引っ張った。
 青い、シャツ。そして、ベージュのパンツ。
「……ぁ……」
 枯れた喘鳴が零れる。どうして、どうして気付かなかった。これは、あの時の彼の服にそっくりじゃないか――!

 アーヴァインは、リノアが洗い終えた洗濯物を抱えて戻ってくるまで、一言も発することが出来なかった。

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