導きの光 拍手小話その1

〜エルオーネ〜
 その姿を見た時、エルオーネは夢でも見ているのかと思った。
 懐かしい、その姿。彼女が見た「弟」の、最後の姿。
 母親に生き写しの愛らしい顔立ち、小さな身体、か細い手足。「現在」の彼より薄い、金に近い色をした茶髪に、陽を嫌うかのような白い肌。紅い頬はきっと、熱があるから。石の家にいた頃は、紅い頬をしてベッドに横たわる彼によく寄り添ったものだった。
 かつての己が犯した罪を今更になって思い出す。かつて、一度だけ彼に向けて吐いてしまった暴言。
 あれは、いつだったろう。エルオーネが、石の家を出る少し前、だったか。
 きっかけは、些細な喧嘩で。
『あんたが生まれたから、レインは死んじゃったんだ!!』
 あの時の呆然とした瞳が忘れられない。
 あの時、彼は何と思ったのだろう? 何かを不安に思い、彼は必死に自分を頼っていたのに。
 彼は翌日から寝付いてしまった。エルオーネは意地を張ってしまい、彼の側に行かなかった。その内、エルオーネは石の家を出ることになり、とうとう謝らないままになってしまった。
 海の上の生活はそれなりに楽しかった。それまでとさして変わらなかったから、というのもある。だが「弟」のことを考えると、会いたいと思うと同時無性に妬ましかった。ママ先生のところで、自分より幸せに暮らしていると信じていた。自分を覚えていない彼に何も伝えないままで「接続」させたのは、半分は嫉妬していたからだと言っても良い。
 もう少し、考えれば良かったのに。何度そう思ったか。
 あの日、久々に会った彼の瞳はまるでガラス玉のようだった。何の感情も見えない、お人形のような。昔と変わらない美しい蒼眼だったが、昔よりいっそうひび割れて、今にも砕け散ってしまいそうな、そんな印象を受けた。
 けれど改めて「再会」したときには、ずっと強い光を放っていて。
 それで、安心してしまったのかもしれない。彼は、自分の言ったことなんてとっくに忘れている、と。
 ――そんなはずないのに。
 彼は、確かに忘れてしまっただろう。誰に言われたのか、忘れただろう。だが忘れてしまったからこそ、その言葉だけが独り歩きを始めてしまった。永く続く苦痛を、その心に植え付けてしまった。
 あぁ、きっと彼は、彼女がどれほど請うても赦してはくれないだろう。己を殺し、また置き去りにした「姉」のことを、きっと赦してはくれないだろう。
 もし、赦しを与えてくれるときが来るとすれば、それは――。

end.



Act.9でお姉ちゃんが唐突に謝ったのは、「接続」で混乱させたというと同時、この一言でスコールを否定してしまったというのもコミコミだったりします。




「導きの光」拍手小話その2



まみむめも! いつもぽちぽちありがとう?!

拍手だけでも大歓迎v でもお手紙も、たまに欲しかったりして……いやいや、来てくれるだけありがたいんやから、贅沢言ったらあかんよ、うん!

あ、そうそう。ラグナ様がね、思い出話してくれたの?。
あたしだけ独占するの勿体ないから、皆も読んでね☆

「導きの光 ラグナの話」

(ガーデンスクエア「セルフィの公開日記」より抜粋)

↑小話その2は本当にこんな文章を拍手お礼画面に載せていました(笑) リンクをクリック頂くとラグナの話に飛びます。