『
DATE:23 August
今日はスコールの誕生日♪
』
8:30am
司令室に行く途中で、スコールはセルフィを見かけた。
向こうも同じく彼に気付いたらしく、満面の笑顔で(トラビア・ガーデンの友人達曰く、『
ぴっかぴかの太陽』のような笑顔で)こちらに駆けて来た。
「やほー、いいんちょ☆」
「おはよう、セルフィ。
……? 何持ってるんだ?」
「ん? あぁ、はい。これ、いいんちょのね」
「は?」
「良いから、受け取る!」
「あ、あぁ……」
「じゃああたし、まだ行くところあるからーっ!」
風のように去っていくセルフィ。
(朝から元気なヤツだ……)
そう思いながら、スコールは渡された封筒を開けた。
「……? 『INVITATION』?」
綺麗なイタリック体の文字。これは、リノアの字のようだ。
何故、リノアが書いた招待状をセルフィが持っているのだか。中を開くと、小難しいゴシック体が目に飛び込む。
『
DATE:AUGUST 23 7:00pm
ON LARGE HALL(THE THIRD FLOOR)
』
これだけはぱっと読めたそれは、とりあえずスコールのポケットに仕舞われた。
11:45am
急ぎでない事務仕事を片付け、スコールは空っぽの胃袋を抱えて食堂に降りてきた。
「やっ、スコール。ここ空いてるよ」
アーヴァインだ。4人掛けのテーブルを占拠して、フォークを振っている。
「あぁ、ありがとう」
スコールは昼食にホットサンドの盛り合わせを購入すると、アーヴァインの好意に甘えて対面に座った。
「……昼から、ケーキか」
「え? あぁ、うん。試作品片付けて、って押し付けられたんだ。スコールも食べたい?」
冗談っぽく言われたそれに、スコールは素直に頷く。仲間達も最近知ったことだが、彼は甘いものが好きなのた。
「そっかそっか。うん、わかった。今晩寄越すよ」
アーヴァインは、満足げに笑顔で応じた。
(ここから先、スコールは緊急に入った仕事の為司令室にこもってしまい、仲間達には会っていない。
だから、この先はリノアが見聞きした一部始終である)
2:00pm
「あ、ゼル!」
「よう、リノア!」
リノアは、両腕にわんさと綺麗に包装されたプレゼントボックスを抱えているゼルを見つけた。
「すごいね、それ」
「だよな。でもこれ、まだ一部分なんだぜ? 何しろ、今回来れない奴らからのお届けモノなんだからな!」
ゼルはニカッと笑った。あくまでも友人の為の「お届けモノ」であって自分のものではないのだが、何だか嬉しいのだ。
「じゃ、俺これを会場まで運ばないといけないから」
「うん、また晩にね」
「またな」
重いはずなのに軽快に飛ばす彼を、リノアは笑顔で見送った。
3:30pm
「キースティ」
「あら、リノア」
友人に声をかけられて、キスティスは振り返った。
「わ、可愛い♪」
その手に持たれた可愛らしい花束に、リノアは歓声を上げた。
「ありがとう。私、今年はこれしか用意出来なくて。あ、会場のお花はちゃんと用意してあるのよ?」
「うん、見てきた。綺麗だったよ〜!」
キスティスは照れて少し俯いた。
「肝心の主役が気に入ってくれれば良いんだけれどね」
「きっと気に入るって! だってあれ、付き合いの長いキスティが選んだんでしょ? 絶対だいじょーっぶ!」
「……そうよね、大丈夫よね」
おどけるリノアと元気付けられたキスティスは、笑顔を揃えて歩き出した。
3:40pm
「そういえば、リノア? あなた、その王冠と白い塊は一体なぁに?」
「あぁ、これ? ガルバディアの風習でね、特別な日のケーキに、この陶器の天使を入れておくの。当たった人は、その日が終わるまで王様になるのよ」
「あら、じゃあケーキに入れるの? スコールに当たるとは限らないじゃない」
リノアは首を横に振った。
「ううん、ケーキを出すときに、横に添えるつもり。今日は、スコールは無条件に『王様』だからね」
リノアは上機嫌で、厚紙で出来た金色の王冠を目の前に掲げた。