夜の狭間で


 TRRR……。
『はい』
「よっ、スコール。いとしのリノアちゃんですよ〜」
『あぁ……ごめんな、連絡出来なくて』
「ううん、良いの。それより、今大丈夫?」
『今はな、大丈夫』
「…………」
『どうした?』
「スコール、本当に大丈夫? 電話出てくれたけど、これから出るところだったんじゃない?」
『いいや、逆。今帰ってきたところだから、まずは軽く食事だな……食べたくない。作りたくない。でも身体のこと考えたら何か食べなきゃな……』
「……しんどい?」
『かなり。でもメインは今日で終わりだから、無理してでも約束通り帰るよ』
「…………」
『リノア?』
「そういう無理はしないで欲しいな……」
『リノアのところに帰るんだ、する価値があるさ』
「でも……」
『………………なぁ、リノア』
「なぁに?」
『そっち、天気どうなんだ?』
「今日は晴れたよ。星がたくさん見える」
『羨ましいな。こっちは雨なんだ』
「そうなの」
『何か、しっとり降ってる、って感じ。わかる?』
「うん、わかるよ」
『だからかなぁ、何か……すごく、寂しい』
「うん」
『寂しい』
「わたしも……わたしも、寂しい」
『…………』
「ね、スコール。そっち何時?」
『…………。朝の8時過ぎ。何だよ急に?』
「こっちはね、そろそろ真夜中だよ」
『そんな時間に電話してきて大丈夫なのか?』
「平気平気。これから寝ても睡眠時間は充分だよん。明日休みだから」
『あぁ、何だ。そうだったのか』
「うん。だから、スコールに伝えたいことがあって、電話したの」
『伝えたいこと?』
「そうよ、大切なこと。ちょっと待ってね……10、9、8、7、6、5、4、3……。
 ♪Happy birthday to you, happy birthday to you……♪
 お誕生日、おめでとう!」
『え』
「あ、やだ、忘れてたな? 自分の誕生日。んもー、だから派遣前にあれだけ確認したんじゃないの。『23日までには帰ってくる?』って」
『………………そ、だったのか』
「へへ、実は電話した理由もそれ。1番最初におめでとう言いたくて……スコール? どうしたの?」
『…………っ、リノア』
「うん?」
『会いたい』
「うん」
『声だけじゃなくて、顔が見たい』
「うん」
『抱き締めたい』
「うん、わたしも……。わたしも、スコールを抱き締めたい。スコールに抱き締めてほしい。だから、待ってるよ、スコール。あなたが帰ってくるのを」
『リノア……』
「ご馳走たっくさん用意して待ってるからね。勿論ケーキも」
『うん』
「急がなくて良いよ。だけど、ひとつだけ」
『何だ?』
「無事で、帰ってきてね」
『……うん』
「早く会いたい。でも遅くなったって構わないわ。ただ、無事でいてくれたら」『うん…………うん、必ず、無事に帰るよ。だから、待っててくれ』
「えぇ、勿論!」
『……じゃあ、そろそろ』
「え、もう? ……あ、そっか。スコールご飯食べなきゃだもんね。ごめんね、引き留めて」
『いや、……リノアの声、聞けて良かった。ちょっと、疲れ飛んだかも』
「あははっ、また大袈裟な〜」
『大袈裟じゃないさ、俺にとっては』
「……もぅ、この天然タラシっ!」
『ふふ……それじゃあ、おやすみ。次は、バラムで』
「うん。おやすみなさい、スコール。良い夢を」




Happy birthday, Squall!!

End.