野郎3+1人の井戸端会議。


 アーヴァインが任務を終えた日の夜半過ぎ、スコールの部屋は俄かに騒がしくなった。
「よぅっ、スコール☆ はい、お土産〜」
「……ってお前らなぁ、俺の部屋は溜まり場か?」
 シャワーを浴びてさっぱりしてきたらしいアーヴァインは、紙袋をぐいと突き出して部屋へ乗り込む。
「おいこら、何勝手に入ってきてるんだ」
「良いじゃないか、僕らの仲なんだし☆」
 何やら上機嫌のアーヴァインには暖簾に腕押し。その背後で苦笑いしているゼルに目配せしたスコールは……彼の隣に突っ立って苦い顔をしている人物の姿に目を剥いた。
「サイ……っ!」
 サイファー・アルマシー。現在スコールが指導SeeDをしているSeeD候補生である。
 スコールは慌てて3人を引きずり込むとドアのキーロックをかける。
「風紀委員まで連れてくるとか、お前何やってんだ?!」
 思わず声を低めてアーヴァインを問い詰めると、アーヴァインはへらーっと笑って見せた。
「いや、それがさ〜。出遭っちゃったんだよね、リカーショップで」
 上機嫌の所以はそれか。スコールは額に手を当て項垂れた。
(見つかってんじゃないかよ……)
 どうしよう。どうしようどうしようどうしよう。
 言い訳が思いつかない。というか、現場を押さえられては何を言ってももう遅い。
 だが、スコールの懊悩にサイファーは気付かない。と、いうか……。
「ったく、ナンパ野郎のヤツに見付かったのが運の尽きだぜ……」
 気まずそうにがりがりと頭を掻き、サイファーがぼやく。
(……まさか)
「サイファー?」
「おい、まさか私生活にまで口挟んでくるんじゃないだろうな? 訓練と試験勉強は真面目にやってるんだから、ちょっとくらい見逃せよ!?」
 早口でまくし立てるサイファーに、スコールは目を丸くした。どうやら彼は、アーヴァインがスコールにチクる為に自分を引きずってきたと思っているらしい。
 スコールはにやりと人の悪い笑みを浮かべる。
「さぁ、どうしようかな?」
「お、おい……」
 サイファーの顔からさっと血の気が引いた。スコールは気に留めずくるりと背を向ける。
 ゼルが暢気に冷蔵庫の扉を開いた。
「なぁ、スコール。何か食い物あったか?」
「あー……ベリータルトが半分くらい残ってる筈だけど。あるだろ? 下段左」
「あ、こいつ?」
 引き出されたのは、大きめの皿に載せられた、こんもりとしたタルトの食べさし。スコールは指差し頷いた。
「それそれ。心して食えよ、なけなしのデザートを提供してやるんだから」
 えらそうに彼は笑って言うが、アーヴァインとゼルはよくよく承知していた。形のやや歪なタルトは、彼の心から愛する恋人の作り上げたものだろう。ここ最近スコールの体格が少し良くなったのは、彼女の並々ならぬ努力の成果に違いない。
 勝手にローテーブルの上を片付けていたアーヴァインは、所在無げなサイファーに意地の悪い笑みを見せた。
「あ、サイファー。余計な怪我増やしたくなかったらソファとベッドには座らないのが吉だよ〜」
「アー・ヴァ・イ・ン」
「おーっと、失礼♪」
 アーヴァインはけらけら笑いながら、手にしたビニール袋と共に寝室へと飛び込んだ。

「と、言う訳で」
 アーヴァインは、グラスを高く掲げた。
『かんぱーい!』
 かぁん! と小気味良い音が響く。4人はそのまま、一気にグラスの中身を飲み干した。
「っはー、やっぱりサイコーだね仕事終わった後の一杯は!」
「オヤジくせェ〜っ!」
 アーヴァインの感慨深すぎる一言を、ゼルが指差して大笑いする。スコールも俯いて噴き出し、こんこんと小さく噎せた。
 それを半眼で見ているサイファーは、妙な感動を抱いた。笑っているのだ、あのスコールが! これを驚かずして何を驚く?
 何だかんだで、サイファーとスコールは幼い頃からずっと一緒だった。
 サイファーには、ティンバーに住む実の祖父がいる。どうして一緒に暮らしていないのかと言えば、話は簡単、祖父はサイファーから見つかるまで孫の存在を知らなかったから、だった。駆け落ちをしてきたという両親は祖父と連絡を取っていなかったとのことで、サイファーがその「アルマシー」という姓と戸籍情報から祖父の存在に辿り着いて初めて、祖父と孫の対面が果たされたのだ。それが確か、5年くらいのことだったか。それからは、割と事あるごとにティンバーに行っている。リノアとティンバーで出遭ったのは、去年の夏休み、祖父の家へ泊まりに行っていた時だった。
 だがしかし、そうしていてもバラム・ガーデンの学生であるサイファーは、同じく学生であるスコール達と一緒にいる時間の方が長い。ましてやスコールとは「石の家」で兄弟同然に育ってきた仲だ。
 ……そう言えば、幼い頃のスコールはいじめられっ子だった。ひ弱で人に懐かない彼は、ほぼ毎日誰かしらに小突かれていた。しかしただやられていたかと言えば、答えは否。彼は非常に負けん気が強く、小突かれれば突き飛ばして返す為、大喧嘩になることもしばしばで……人に構いたがるがき大将だったサイファーなどは、もう何度喧嘩したことだろうか。
「おいサイファー、呑んでるか?」
 頬をほんのりと上気させ、スコールがサイファーを覗き込む。
「お前、案外不良だな……」
「今更。お前だってそうだろうが、風紀委員長」
「うるせー、風紀委員は不良のヘッドって相場が決まってんだよ」
「何だそりゃ」
 ゼルが遠慮なくサイファーの後ろ頭をはたくと、狭い部屋に笑い声が満ちた。
(こんな風に、酒呑むことがあるなんてな)
 サイファーはぎこちない笑みを浮かべ、グラスの中身を一気に飲み干した。

「そういやさ、僕気になってることがあるんだけど」
「何だよ?」
 ゼルが不思議そうに首を傾げると、アーヴァインは本棚の方を示した。
「先刻気付いたんだけどさぁ、スコール、『メサイア』なんて読むんだ? あれ、女性向けでしょ?」
「………………」
 ゼルはくるーり、と部屋の主を見遣る。女性向け、ということは、つまりは……?
 スコールは大いに嘆息した。
「……ゼル、この場合の『女性向け』は恋愛系の描写が多いって意味だ。断じて野郎同士の話じゃないから安心しろ」
「あ、そ、そうなのか!」
 多いに胸を撫で下ろすゼル。あらぬ疑いを払拭したスコールは、憮然とした顔でアーヴァインを睨んだ。
「俺が読んで悪いか。あれ、8割方アクションだぞ。基本は野郎向けのSFだし」
「いやでも、10巻でメアリとジェイが……いちゃついてるシーンあったじゃない。ああいうの、スコール大丈夫なのかな、と思って」
 アーヴァインが一瞬言い淀んだのは、免疫のなさそうなゼルと、案外男女交際に関してうるさいサイファーに遠慮した為だ。実際の描写はいちゃつくどころではなく、れっきとしたベッドシーンだったりする。
「そりゃあ、初めて読んだときは驚いて本閉じたけど」
 スコールは手元のグラスに口を付けた。
「……まぁ、うん、ちょっとな」
「ちょっとって何なんだ」
 煮え切らない態度のスコールに、サイファーが食いつく。
 そこに爆弾を投下したのは、スコールの胸を指差したアーヴァインだった。
「あれ、下手な男性向けよか描写すごくない? 女性の作家が書くとやっぱり違うのかなぁ〜」
 無言のスコール。だが、グラスを煽るその頬は酒だけではない赤みが差している。
「……スコール?」
「…………悪いか」
 目的語を吹っ飛ばし、スコールはゼルを睨む。
「いや、安心した……」
「不本意ながら俺もだ」
 サイファーが、親しげにスコールの肩を掴む。
「お前も、普通のヤローだったんだなぁ」
 スコールは鼻を鳴らして手を払いのけた。
 本当に、最初にそのシーンを目にした時は驚いて勢い良く本を閉じたのだ。多分、顔も真っ赤になっていた。
 そりゃあ、物語の展開からしてみれば予想出来る方向性だった。紆余曲折の末に、主人公とその恋人が、隠れ家で人前式を行ったその夜、とくれば次に来るのはお約束なあのシーンだろう。豪快かつ繊細な描写に定評がある「メサイア」だから、そのシーンも微に入り細に入り書き込まれていた。免疫のないいたいけな青少年に、恥ずかしがるなという方が無理な話だ。……因みに、誰にも言ったことがないしこれからもするつもりはないが、スコールが手慰みを覚えたのはこの本のせいである。
 黙り込んだスコール。アーヴァインは絡む気満々で彼の肩に手をかけた。
「ん・で・さー、リアルどうなのよスコールくん。まーさかリノアちゃんなんて可愛いカノジョがいながら小説オカズにしてる訳じゃないでしょ〜?」
「ぶっ」
 盛大に噴き出したのは、絡まれたスコールではなくサイファーだ。ゼルが大袈裟な動きで飛びのく。
「うぉきたねぇ! 何やってんだよサイファー!」
「ちゃんと拭けよ」
「うっせぇわかってるよ、つか誰のせいだよこんちくしょう!」
 首にかけていたタオルでばたばたと酒を拭き取るサイファー。部屋主はラグマットを敷いていなくて良かったと思いつつ、グラスを煽った。
 一旦は身を引いたアーヴァインだったが、彼は諦め悪くずずいっと身を乗り出してくる。
「んでどうなのよ、その後リノアとは?」
「…………」
 スコールは紅い顔でアーヴァインを睨んだ。そして、溜息ひとつ。
「……なぁ、アーヴァイン」
「何だい」
「オンナって、何をどうしてやったら一番悦んでくれるんだろうな……」
 この返答にはむしろアーヴァインの方が固まってしまった。当然、まだまだ発展途上なゼルは石化している。サイファーは最早諦めた様子で酒を啜っていた。
「それ、って……こう、何て言うの、所謂アレ? メイクラブ?」
 アーヴァインの確認に、スコールはこっくりと頷く。
「何かネタないか? ホント地味に困ってるんだけど」
「……って言われてもねぇ……」
 アーヴァインはかりかりと頭を掻いた。
「うーん、僕も研究中だったりするんだけどな。現実の女の子はキスして胸触ってはいいただきますって訳にはいかないしね」
「え、マジ?!」
 ゼルが腰を浮かせて大声を上げた。スコールは呆れた顔をする。
「お前……」
「え、だってさ、ビデオとかだと……」
「ビデオなんざ野郎に良いように録ってるに決まってんだろ。信じんなんなもん」
 サイファーはぼそっと突っ込むと、グラスを床に置いた。
「大体な、あんなもんは結局のところ幻想なんだよ。オンナってもんはもっとヤワラカイんだ。無理にしたら簡単に傷いっちまうんだぜ? それにな、あいつらは思ったよりムード重視だ。セックスより何よりまずはキスだし、キスより抱き締めて髪撫でて、くっだらないお喋りとやらに付き合って可愛がってやる方がよっぽど悦ぶぞ」
 リノアはその典型例だろ、と言われ、スコールは考え込んだ。
 リノアはくっつくのが好きな子だ。スコールは今までそんな女子を目の当たりにしたことがなく、最初は本当に戸惑った。恋人達は抱き締め合うものであり、キスし合うものであり、身も心も触れ合うものである、と様々な手段で主張してくる彼女に、スコールは不器用ながらも応えた。
 ただ、サイファーが言う程、彼女はムードにこだわってはいないようにも思う、のだが……。
(……あぁ、そういえば)
 スコールはふっと、初めての夜のことを思い出した。
 告白されて、抱き締め合ってキスをして、流されるように触れ合った。その中に、自分でもどきどきするような感じがなかったか、と言われたら……それが、ムードってやつではないのだろうか。 流された、と言われても仕方ない。だけど、大切な時間だった。あの瞬間、お互いが誰よりも何よりも愛おしくて、その存在を確かめたくて必死だった。
 思い出してしまえば、自然と口許が緩む。はっきりと笑みを象った彼の頬は、本人が軽い平手で叱咤したところでなかなか直りそうもない。
 それを目敏く見付けたアーヴァインは、にやにやしながらスコールを肘で突く。
「あ、何だいスコール。思い出し笑い? やだね〜これだから幸せモンはっ!」
「誰が『幸せ者』なの?」
 突如寝室のドアが開き割り込んできた声に、3人はそれはもう驚いた。
「りっ、リノアっ?!」
「うわ、わ、わ、」
「…………!!」
 暢気に首を捻り、背後に立った彼女を見上げたのはスコールばかりである。
「リノア! お前何でこんな時間にこんなところ(男子寮)にいるんだよ!」
 いきり立って腰を浮かせたサイファーに、リノアはきょとんと首を傾げた。
「何でって……寝に来たんだけど」
「寝に?!」
 目玉を剥くその姿は、間違いなく風紀委員の姿である。しかしリノアは全く気にせず、寝室に鼻先を突っ込むとわざとらしく顔をしかめた。
「お酒くさーい。不良だ〜」
「……SeeDだから良いんだよ」
 事実である。
 バラム・ガーデンが存在するバラム国において飲酒・喫煙が禁じられている未成年とはいえ、何時、どんな任務が舞い込んで来るとも知れないSeeD達は、ガーデンの中でなら飲酒が許されている。喫煙は一応禁止、という程度だが、教師や経営陣が子供達の前では吸わなかったし、また体力や肺活量が物を言う格闘・白兵戦を専門にする者がやはり多い為、殆ど誰も嗜まない。この不良っぽい見た目のサイファーですらガンブレードを盛大に振るう為肺活量を大切にしていたし、ましてやゼルは専門が格闘術である。またアーヴァインは嫌煙家であり、スコールは気管が弱い為に決して喫煙することはなかった。そんな訳で、ガーデン生がグレるといっても、それは大抵真夜中の海に向かって突っ走るとか、飲酒してみるとか、プチ家出とか、そんなものである。
「って、サイファーは駄目じゃない」
「監督官がお目こぼししてくださったから良いんだよっ」
「そうそう、良いんだよ。今日は無礼講ってやつ」
 ドア近くに座り込んだスコールは、尤もらしくサイファーに同じる。リノアはくすりと笑うと、恋人の顔を覗き込んだ。
「で、誰が『幸せ者』なの?」
「ふふふ」
 スコールはにまーっとあどけない笑みを見せると、そのままもたれかかるようにリノアの膝に甘える。
「わ、こら、危ないでしょ。転んだらどうするの」
「リノアなら受け止めてくれるだろ?」
「もぅ、この甘えんぼ。重たーい」
 くすくす笑いながら頭を撫でるリノア。
 何となく無言の圧力を感じた3人は、そろそろと片付けを開始した。
「何だよ皆、もう帰るのか?」
 きょとんとするスコールに、アーヴァインが苦笑いする。
「出歯亀したくはないからねぇ」
(っていうか気付け。気付いてくれお前の背後の気配に!)
 ……この時程、ゼルとサイファーの気持ちが一致したことはないだろう。
 リノアの目が、「早く出ていけ酔っ払い」と告げていた。それが、ほぼ対面の2人にはよく見えたのだ。
 3人は手早く宴の後を片付ける――無理に乗り込んだのは彼らなのだから、皿の片付けはともかくゴミくらいは持ち帰る――と、脱兎の如くスコールの部屋を逃げ出した。
 スコールはのんびりと手を挙げる。
「おやすみ、皆」
「おやすみなさーい」
 その2人の言葉を最後に戸を閉めた3人は、互いに顔を見合わせる。
「……飲み直す?」
 ぼそっと呟いたのは、アーヴァイン。
「だな」
 ゼルが神妙に頷いた。
「ここから1番遠いのは俺の部屋だけどよ……来るか?」
 サイファーの提案に、アーヴァインとゼルは彼の顔をじっと見た。
「……誰も来ねぇよ、な?」
「おぅ」
「さっきの二の舞とか、ごめんだよ?」
「大丈夫だ。風神の奴は、消灯の後は自主的にこっち来ることねぇから」
「あ、やっぱ付き合ってるんだ? よっし、今度はそこんとこ聞かせて貰おうじゃないの〜」
「ふん、意地でも口割らねぇぞ」
「とか何とか言ってる奴が1番口軽いんだよなー」
「おいこらチキン野郎、んなコト言うんならお前も吐けよ」
「げぇっ、薮蛇……」
 野郎共の夜は、平和に更けていく。

 2人きりになった部屋の中、スコールは残された皿やグラスを集めているリノアへ擦り寄った。
「こーら、邪魔しないの」
 リノアは優しく窘める。スコールはお構いなしに彼女を抱き寄せると、猫が甘えるような仕草で頬を寄せた。
「やっと帰った。リノアが来てくれたからだな」
「良く言うわ」
 リノアは意地悪く微笑うと、ポケットに入れていた小さな機材を取り出した。
「内線鳴らして早く来いって急かしたのはあなたじゃないの。わたしばっかり悪者にしてー」
 そうなのだ。
 野郎ばかりの宴会の最中、スコールは一度だけ用足しに腰を上げた。そのとき、こっそりとリノアの部屋へ内線をかけたのだ。彼女が出る間もなくワンコールでそれは切れたが、しかしリノアには意図が読めた。これは、早く戻ってこいというスコールの催促だ。
 スコールはどこ吹く風で肩を竦め、リノアを膝に抱き込んで髪を弄る。リノアはしっかと自分を抱えている恋人の腕を優しく撫でると、苦笑しながら彼の頭を撫でた。
「全く、あの司令官殿がこーんなに甘えん坊だなんて、皆が知ったらどう思うでしょうねぇ?」
「リノアだけしか知らないから良いんだよ」
「もぅ」
 諦めたように身体を預けるリノア。スコールは満足げに微笑む。
「ね、スコール」
「ん?」
「さっきの『幸せ者』って、スコールのことだよねー?」
「うん」
 スコールは何のてらいもなく頷いた。
「リノアがいるから、幸せ」
「語尾が舌っ足らずになっていますよ、酔っ払いさん」
 リノアは腕を伸ばし、スコールの頭をてんてんと叩いた。
「……酔っ払いついでにもっと甘えたいんだけど」
 鼻先を首筋に潜り込ませてくるスコールに、リノアは苦笑する。
「じゃあ、お風呂入って歯磨き済ませてらっしゃい」
「そうしたら良いのか?」
「えぇ、そうしたらたっぷり甘えてくれて構わないから」
 その間に片付けてしまって、寝る準備を完了してしまおう。リノアはそう目論んだのだが、しかしそれはあっさりふいにされてしまう。
 スコールはひょいっとリノアを抱きかかえ、危なげなく立ち上がったのだ。
「え、あ、こら、ちょっと」
「風呂入ったら良いんだろ? リノアも一緒に入ろ」
「でも片付けが……」
「そんなの、明日で良いよ。今はこっちが大事……」
「ん……っ、こ、ら、ちょ……あんっ」

 ……まぁ、この後の2人がどうなったか、なんていうのは……言わぬが花、というものだろう。




End.