好きになったのは、入学式。新入生総代をやってた姿を見て。

 俗に言う、一目ぼれ。

 会ってみたい、話がしてみたいと思っても、いつも空振りばかり。

 そんなことが二年続いて、私は今年、憧れの彼と同じクラスになってしまいました。



「あ…お疲れ、手塚君」

「ん」

 運がいいのやら悪いのやら、私の席は手塚君の隣。

 取り敢えず挨拶をするのが、私の日課。

 …今日は朝からちょっと用事があって、ねぎらいになってるけど。

「今日も、頑張ってたね。大変じゃない?」

「いや、好きなことだからな。大変と感じるより、もっとしていたい気持ちのほうが強い」

「そうなんだ」

 どちらかと言えばビビリの私は、緊張してしまうと会話をそれ以上つなげることが出来ない。

「そういうも、いつも頑張ってるじゃないか。美術部」

「で、でも朝練とかないし…」

 こういうときは大体、手塚君の方から会話をつなげてくれる。…と、いうか、上機嫌なとき、彼はちょっぴり饒舌になる。

「…そっ、そうだ。手塚君、誕生日いつだっけ?」

 話を思いっきりぶち切って、手塚君に訊いてみた。

「ん?誕生日?」

「うん」

 不思議そうな手塚君。

 首を傾げる姿が、やけに子供っぽくて可愛く見えた。

「10月7日だが…何かくれるのか?」

 …ぷ。

 こんなこと言う手塚君を独り占めできるんだから、クラスメイトは美味しい。

 私の緊張は一気にほぐれて、自然と笑顔を作る。

「どうしようかな。何が好き?」

「何って、何だ?」

「それを訊いてるのに」

「う、ん…種類は?」

「何でも。…あ、でもあんまり高いのは無理よ?上限2000円!」

 私が指を立てて宣言すると、手塚君はふふっと笑った。

 …わらった。

 この人、笑うと中学生じゃなくて高校生…いや、制服着てなきゃ大学生に見えちゃうよ!

 うわーぁー!!

 ……なーんて私の内心が手塚君に解るはずもなく、

「どうした?

などと、更に不思議そうに首を傾げる。

「な、何でもない何でもない」

 私が思いっきり首を横に振ると、手塚君はまた笑った。

「そういうところ、可愛いな」

 ………殺し文句ぢゃないですか………





 さてさて、期限はあと一週間!

 何を贈ればよいのやら。

 テニスコートが綺麗に見晴らせる木陰に陣取ってスケッチを取っていると、なんと!

 手塚君が来てしまった。

「何を描いているんだ」

「えっ?!」

 声をかけられるまで気づかなかった。(間抜けすぎる…)

「え、えと…群集スケッチ。私、いっぱいあるものを描くの苦手だから…」

 慌てて手元のスケッチブックを隠そうとしたら、引っ張られて覗き込まれた。

「あわわ、下手だよ!」

「上手いよ。苦手と言う割に、綺麗に描けてる。自信を持ったらいい」

 褒められてしまいました…。

 「ありがと」と言うと、手塚君は少しだけ笑ってくれた。



 傍にしゃがむと、は少し居心地悪そうに身をよじった。

 俺はそこまで威圧的なんだろうか。

「あ、そう言えば、部活は?」

「もう引退しているからな。行きたいときに行くだけだ」

 俺がそう言うと、は「そうなんだ」と微笑む。

 …少しの沈黙。

「…、そのスケッチブック、見せてもらえると嬉しいんだが」

 思い切ってみると、は頬をバラ色に染めて差し出してくれた。

「あんまり…上手くはないんだけど」

 俯いて、肩を竦める

 はじめのページに戻してぱらぱらとめくると、それはスケッチブックと言うよりもクロッキーブックなのが解った。

 数を描くためのスケッチブックだ。

 大半が風景画、あるいは群集画、または遠景。

 デッサンこそ取られていないものの、なかなかのものだ。

 …と、そこで俺はあることに気がついた。

「人物は描かないのか?」

「…あ、人物は描くときりがないから…」

「ないのか?」

「うん、しかもイラスト系だし」

 えへ、と苦笑い気味に神代は笑う。

「…イラスト?」

「うん。私、イラストレーターになるのが夢なの!」

「そうか…」

 今度は嬉しそうだ。

「…じゃあ、それで何かくれないか?」

「え?」

「プレゼント、くれるんだろ?」





 …さてさて、大変なことになってしまいました。

 なんと!私は手塚君に絵をあげることになってしまったのです…。

 

 ………どんなのを描けばいいんだろう?





 まぁ、何はともあれ。

 お誕生日おめでとうございます、手塚国光君!!

*−*−*−*−*
 ドリーム第3弾は手塚君誕生日ドリ。
 …ご、ごめんなさい、偽者度200%!!
 あーでも書いてるのは楽しかったです。
 ……ってか手塚君苗字しか呼んでないや。
       2003,10,6 'Sassy-talker' 氷月 晶